経済人

経済やウェブやゲームなど、気になることを書いていくつもりです。

定時退社なんて可能なわけがない!誰しもに死ぬ気で仕事を身に着けるべき時期がある!

はてなの匿名ダイアリーでこんな記事を見ました。

定時退社を導入するとどうなるか

かなかな興味深い。これがフィクションだと疑う人もいるし、1年前から導入したと書いてあるので、ひょっとしたら本当のことなのかもしれない。ここではその真偽を追求するつもりはありません。
あくまで「匿名ダイアリー」の投稿なので、そこには触れないことがルールです。

この記事は非常にネットなどで拡散されているのですが、「はてなブックマーク」というコメントとブックマークが合わさった機能のものがあり、そのコメントがあまりにも酷すぎたので意見したいと思いました。


一番人気のあるコメントが

世界で当たり前のジョブ型雇用では、自分に定められた職務だけをする。他人の職務を手伝うのが当たり前という日本特有のメンバーシップ型雇用の悪癖がなくなったことを嘆く必要はない。外国はそれで上手く回ってる。

というものでした。(引用のルールに反するかもしれないけれど、可哀想なので誰の発言かはここでは書きません。)


ジョブ型雇用が海外で上手くいってる、という認識がこれほどまでに多いことに驚きます。
これは典型的な、外国というものに夢を見がちな発言の内の一つです。まあみんなあまり考えずに賛同を示しているのかもしれません。


まともに自分の頭で考えている人なら知っていることですが、この世に理想郷はありません
ジョブ型の雇用は、それはそれで問題が起こっています。ヨーロッパ(ヨーロッパと言っても広いのですが)は日本とくらべても、若年失業率が非常に高いです。これは「ジョブ型」の弊害と言われています。


匿名ダイアリーでは、「ボトムアップからトップダウンになる」と書いていますが、まったくその通り。ジョブ型では、その人材が持っている「能力(スキル)」にお金を払うのです。


スキルを持っている人に、スキルに見合ったぶんだけの賃金を払う……というのは、聞こえはいいですが、そんなに素晴らしいものではありません。

なぜなら、ほとんどの人間は、高度技術化した現在の産業に適応する技術など持っていないからです。率直に言ってしまえば、新卒にしろ院卒にしろ、20代のほとんどの人間はまったく戦力にならないのです
宮廷の院卒の理系には一部突出した能力を持っている人材もいますが、それは無視できるレベルの誤差です。

人材は、誰かが育てなければいけない。
問題は、その若者をどうやって育てていくかということで、そこに関して、現在様々な矛盾が噴出しています。
そして、ジョブ型のヨーロッパの最大の問題点は、若者を「オン・ザ・ジョブ」で育てられないことにあるのです。

つまり、個人の人格や将来性を加味せずに、「スキルだけを買う」といった雇用形態をとる場合、基本的に企業側は熟練のスキルを持った人間を取りたがります。
当然ながら、ずっとその仕事をしていた人は仕事があって、新しく仕事を覚えなければならない若者が、職にありつけないという情況が続いているのです。仕事をとれないから成長できずにどんどん仕事がなくなっていく……という悪循環です。

それが、ヨーロッパのジョブ型の現状です。EUの地域的な特典を活かしているドイツを除けば、多くのヨーロッパの国々はガタガタです。


もちろん、日本の「会社主義」と「社畜主義」に様々な矛盾と弊害があることは理解しています。
しかし、往々にして、「社畜」であることのメリットを人々は忘れがちです。日本企業の最も大きなメリットは、無能でも働けること、これに尽きます。


シャープや東芝の有様を見て、みんな日本企業は駄目だと皮肉交じりに言いますが、まだ一応「先進国」とは言えるレベルです。そして、その水準を維持するためには、必至に働き続け、しがみつき、成長しなければならない。
もちろん、将来性のないようなブラック企業は滅びるべきです。しかし、アニメ産業やアパレル産業などのように、どうしてもある程度のブラック労働を乗り越えなければいけない業種も、存在すると思うのです。

甘くない世の中の残酷な二択として

  • ホワイトだけど有能しか働けない社会
  • ブラックだけど無能でも働ける社会

というのがあります。

前者を夢見る自由はあります。なぜ前者のような社会にならないのかと愚痴を漏らす自由もあります。
しかし、社会には有能な人間よりも無能な人間のほうが圧倒的に多いという現状から目を背けてはいけません。
私も含めてですが、無能な人間からすれば、自分が誰からも必要されない世界よりも、仕事がつらいけど、何らかの社会の営みに関わっていられるほうがずっとマシだと思うからです。


自分の経験を正当化したいわけではありませんが、ネットの「死ぬ気で働くなんて馬鹿らしい」みたいな言説は真に受けないほうがいいですよ。
理不尽でブラックではあるけど、無能にチャンスを与えるのが日本のやり方です

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「シンゴジラ」でも見てモチベーションを高めましょう。