経済人

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若者の犠牲ばかり叫ばれるけど、おっさんのほうがつらいのでは?

NHKでこんなニュースを見ました。厚生労働省の発表によると、過労で心の病になってしまう人は、30代が最も多いらしいです。

過労で心の病 30代が最も多い 厚生労働省まとめ | NHKニュース

  • 30代…31.6%
  • 40代…26.6%
  • 20代…22.4%

で、30代が最多とのことです。世代人口比なども加味すると、もう少し若者の比率は高くなるかもしれませんね。
注意しておきたいのは、5年間のうちに労災が認められた人のデータであり、氷山のほんの一画に過ぎないということです。

中高年だってつらいのですよ……

前途ある若者がブラック企業によって壊されてしまうのは、本当に心苦しいことです。
問題は、力と情報を持っている年輩が、彼らに配慮せず、自分たちの不合理を押し付けてしまうことにあるのでしょう。
しかし、世間一般で、若者を使い潰すブラック企業という言説が広まっていますが、「おじさん」に当たる30代後半、40代、50代も、下手したら若者以上につらいのです。
データがそれを表しているし、なんだかんだ言って、需要があり、未来がある若者のほうが、逃げることが可能です。
むしろ、一つの会社に奉公してきて汎用的なスキルも身に着けず、妻子もいてそこにしがみつくしかないおっさんのほうが、つらいということもありえるでしょう。
自分の幸先に希望が持てないことに加えて、「かわいそう」「虐げられている」とも言われないおっさん。自分も低賃金で働いているのに、「若者を搾取している」と言われているおっさんのほうが、つらいのではないか、ということを、私が今まで働いてきた中での皮膚感覚で感じています。
若者は、ある種の象徴として扱われやすいのでしょう。それもまた不幸なことではあります。

若者の労働の問題は?

つらいのは若者だけじゃなく、おっさんもそれ以上につらいだろうというのが私の立場です。
しかし若者の労働を考えるにおいて、もっとも酷いことは、情報の非対称性を利用する企業が多いことですね。
やはり新卒というのは、様々に知識がなく、自分が使い潰されていることに気づかないのです。
そういう無垢さを利用して、架空の餌をぶら下げて、利益を得るやり方……これは非人道的と言うほかないですね。

選別目的の大量採用をやめろ

もう一つ、これはさすがにもうやめろよ、と言いたいことがあります。
電通や大企業などで見られる悪しき慣習ですが、「やめることを前提に新卒を多めに採用する」というものがあります。
人材というものは、基本的に働かせてみないと価値がわからないので、最初に「激務」を経験させ、幹部候補をふるい落としていくのです。

これは、新卒が大量にいた時代には合理的な方法だったのですが、少子化が進み、若者を大切にしていかなければならない社会でやって良いことではありません。選別の結果、心身を壊され、職場から投げ出されてしまった若者は、けっきょく国が支援していくことになります。外部不経済を平然と生むような慣習を許してはいけません。

若者と年寄りの二元論ではない

苦しんでいる若者も、苦しんでいるおっさんも、苦しんでいる老人も多い国が日本です。
一億総中流」幻想の延長にいる私達は、日本におけるある集団を規定する最も大きなファクターが「世代」だと思いがちです。
しかし、私はもはや「階級」で考えたほうが良いと思うのです。
それにつきましては、また長くなりそうなので、機会を改めて書いていきたいと思っていまうs.

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)

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